「教えてやる! 東大は簡単だ!!」
倒産寸前の私立高校に現れた三流弁護士が、勉強とは何の縁もなかった高校3年生を東大に現役合格させると言う。はたして……?というマンガ。
東大は難しい。とても普通の人には合格できない。と思われがちだが、論理的に、冷静に考えれば、学部を選び、各教科のバランスをとれば合格は難しくない。というふれこみで、廃校寸前の高校から1年で東大合格者を出そうとする桜木弁護士。
「世の中ってのは頭のいいヤツのいいように作られてるんだ」
「勉強してだまされないようになれ」
「このままいってもフリーターにでもなって、くだらん男にひっかかって……だろ?」
「東大に入れば人生180度変わるんだがな……」
「とにかく東大に合格させればいい。あとのことは知らん」
などと、どぎついことを言いながら生徒を釣り込んでいく桜木。
子どもに〈世の中〉の仕組みというやつを「実はな……」という感じでちらつかせて蒙を啓かせ、受験競争を正当化する。よくある理屈だ、とは思いつつも、桜木弁護士の言動にはいちいち納得させられてしまう。これは、桜木弁護士自身が作中で絶対化させてはおらず、自分の欲もとおしつつ裏でも苦心していることと、予想される反論を取り込み、それにうまく反論させ、そこから妥当な解決策を導き出すという作者の手腕によるものだろう。
受験にかぎらず、結局、人間は何か具体的な目標を定めないと動き出さないもので、目標を定めたところから人間の活動が始まるのだということを感じさせられた。当たり前のことではあるが。
桜木が呼んでくる各教科の先生達も魅力的である。芥川龍之介をパロった国語の芥山先生あたりからおかしくなってきて、特に理科の阿院修太郎(あいん・しゅうたろう)先生はツボである。ヤバイ。阿院ヤバイ。
というか何よりもこの作者のデッサンが狂ったような(失礼)画風自体にひきつけられる。中毒性がある画風だ。
面白いです。(イワン)
何を隠そう、こないだ教師を始めたころから読み始めている。べつに参考にしようとしたわけではなくたまたまだったのだが、色々感じさせるところのある面白い漫画だ。話題になってるし、今度ドラマにもなるらしい。「カイジ」みたいな(絵もそうか)達成ゲームの感覚もある。
知り合いに東大生や東大教授が多いので、実際に受験の話を聞いてみるとやはり京大などとは試験の出方がだいぶ違うようである。もちろんそれでも僕のような、満遍なく受験科目をこなす力のない者(要するに三教科しかできない者)にとっては、いかんせんきつそうなのだが。
達成課題を与えることで、生徒の自主的な向上性を常態化してゆく手法は、それとして評価できる。また、公文式などじっさいに使われている教材などをばんばん出してゆくのも効果的だ。
あと勉強法などに関して、自分がかつてやっていたことなどが引き合いに出されたりすると、妙にうれしかったりする。まだまだ中盤に差し掛かったころかもしれないが、とにかく先が楽しみである。(R)
最近生徒がよく読んでいるので、ぼくも読んでみた。
マンガとしては面白いので別に不満はないけど、勉強法自体はぼくが受験生だったころから言われていることで特に目新しいわけではない。国語に関して言えば、芥山先生の言っていることは出口汪の受け売りだろう。他の教科もおそらく平均的受験生なら一度は耳にしたことのある勉強法ばかりだろう(基本英文の暗記というのははじめて知ったが)。数学・英語はチャート式が良いとか、英単語は「ターゲット1900」と「速読英単語」とか、世界史は山川の教科書と用語集とか、古文はとりあえず「あさきゆめみし」とか、なんだ昔と変わらないなあとちょっと懐かしい気分になってしまった。書店の受験コーナーに行くと、膨大な量の参考書・問題集を前に茫然とするのが受験生の常であり、どう手をつけて良いのか分からず結局買った参考書も問題集も中途半端になってしまうことが多い。確かにこのマンガはそういう点では参考になると思う。
ただ、おそらく作者が本当にターゲットにしようとしているのは受験生ではなく、教壇に立つ教師の方なのだと思う。作中示されるように、出来ない子には基礎基本の反復が重要である。しかしどうしても学校ではその基礎基本に時間を割きにくいという現状がある。水野と矢島のように同程度の学力なら教えるほうもやりやすいが、教室には基本の出来ている子と出来ていない子が同居している。規定により評価基準が決まっており、また指導案によりどの程度の進度で授業を進めるかも決まっていて、基本に時間が割けない。そして何より水野や矢島のような意欲を持たない子が多いということがある。ふたりは家庭に問題を抱え、それ故にその状況から逃げ出したいという願望があるが、ぼくの勤め先の生徒のように、田舎のぬるま湯にどっぷり浸かって、抜け出したいとも感じない子供も多いのだ。別に生徒が悪いわけではないし、教師と制度に問題のあることが多いのも認めるが、いかんともし難いのも事実である。
小谷美紗子の「明日からではなく」という曲の歌詞。
ぼくは教師です 就職先がなく
なりたくもない教師になりました
やる気のないわたしと やる気のない生徒
いっしょに感じるものも なにひとつない
う〜ん。ぼくの心情にピッタリ。まあこのあと「明日からではなく 今日から打ち明けてみよう みんなと一緒に学校を変えたい」と続くんですが。(A.I.)


